期待値を一口に言ってしまうと,「試行の結果,考察したい事象」の平均ですが、少し前置きを書かせてください。 |
ある試行 T において,観察したい値がちょうどn 種類あり, その値 x1,x2,x3,…,xn のどれかが必ず起きて, それぞれが起こる確率が p1,p2,p3,…,pn であるとき, この値の期待値を次の式で定義する。 E(X) = x1 p1 + x2 p2 + x3 p3 + … + xn pn ただし,p1 + p2 + p3 + … + pn=1 |
まだ数列(記号)を習っていない数学Aではこれが精いっぱいですが,数学B以降では次のようになります。
一見難しそうな式ですが、よく考えてみるとこれは平均値と同じ計算方法です。 あくまで個人的な解釈ですが、「観測された(過去の)データ」を集計をするのが平均値であり、 「やってもいないこと(未来予測)の平均」が期待値と分けて考えています。
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例題 1 1 つのさいころを 1 回振るとき,出る目の期待値を求めよ。 |
一般の定義をこの問題で説明しなおすと,確率変数 X は「出る目」のことです。 例題 1 を表にまとめると,次のとおりです。(この表のことを確率分布,といいます)
求める期待値は,
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例題 2 100円硬貨と50円硬貨を1枚ずつ投げ,表が出た硬貨がもらえるとすると,もらえる金額の期待値はいくらか。 |
期待値計算は,確率分布の表を作ると楽になることがあります。
一般の教科書に対抗するようですが,縦と横は逆にしたほうが分かりやすいと,私は思っています。
金額(@) | その確率(A) | @×A (円)
150円 | 1 | 4 150 | 4 100円 | 1 | 4 100 | 4 50円 | 1 | 4 50 | 4 合計 | 75
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以上より,求める期待値は,75 円
原則全ての事象を考えるのですが,値が 0 (円)になる場合は(掛けると 0 になるので)省略しました。 また,75 = 150/2 (円) です。(金額の合計)×(表の出る確率)になっていることも興味深いと思います。
期待値は,実は賭け事から発展した学問です。この例題はまさにその 1 つです。
法的に許された「宝くじ」などは,まさにこの原理で販売されています。 |
例題 3 | 宝くじの賞金と本数を,以下のように決める。賞金の期待値はいくらか。
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全部で100本ですから,求める期待値は,
5000 × 4 + 1000 × 10 + 500 × 16 + 100 × 20 100 | = 400(円) |
例題 3 の設定でくじを売るとき,宝くじ業者は1本 800 円で売らなければならないと法律で定められているようです。 法律でこう定められている以上, 1 本 300 円で売られている宝くじの賞金の期待値は 1 本あたり 150 円以下のはずです。 当たりくじの最高金額を 3 億円に設定すると,それだけ多くのくじを売らなくてはいけません。 細かい金額設定はよく分からないのですが,確率 1/10 で末等 300 円が当たります。 業者側から見たら返金額の5分の1を末等で失うことになります。 他の当選金額を除いても,1 等の 3 億円(前後賞を含む計3枚)を配当するには, この分だけでも 6 億円以上の収益を上げなくてはならないわけです。 つまり,3 億円だけを配当させるだけでも,20 万枚を売らなくてはいけないのです。 末等と 1 等だけでも合計 25 万枚売らなくてはならない計算になります。 私は宝くじを買わないので,これ以上の言及はできません・・・ |
性質 | 証明のリンク | ||
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〇 さいころ n 個を同時に振ったときに出る目の和の期待値・・・3.5n | 期待値の定理 1,2 を用いる | ||
〇 1 回の試行で事象Aが起きる確率が pであるとする。これを n 回繰り返すとき,二項定理 5
| 〇 m 個の白玉を含む n 個の玉が入った袋がある。 | 未完
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期待値については,興味深いことが多いので,他の事項でも関連があれば紹介しています。