反復試行の確率について

同じ試行を何度も繰り返すことを,反復試行という。

例題 1 1 つのさいころを 5 回振るとき,次の確率をそれぞれ求めよ。
(1) 5 回とも 3 の倍数の目が出る確率
(2) 3 の倍数の目がちょうど 2 回出る確率
(3) 3 の倍数の目が 2 回以上出る確率
(4) 1 の目がちょうど 1 回,3 の倍数の目がちょうど 2 回出る確率

(1)  問題ないと思いますが、念のため…
5 回とも確率 1 が起こり,その各々は互いに独立だから,
3
(1 )5 = 1
3243

(2)  これが今回の主テーマです。
なぜ nCr を掛ける必要があるのか,いつも質問されます。
機械的に覚えることはできても,納得できないのでしょうね…
私の授業を受けた生徒からも改めて質問されることがあり(怒りたくなりますが),
まず,次が起こる確率は何を指すか,改めて考えてみましょう。
(1)2 (2)3 …(A)
33
(A) は,「最初の 3 回は 3 の倍数の目が出て,残り 2 回は 3 の倍数の目が出ない」確率を求めています。
「3 の倍数の目が出る」事象を☆,「3 の倍数の目が出ない」事象を△とすると,
☆☆☆△△ の順に出ることしか数えていませんから…

「ちょうど 2 回 ☆ が起こる」という文章は,「何回目にこれが起こっても構わない」と解釈してください。すると,

☆△☆△△ の順に起こっても良いし,△☆△☆△ の順に起こっても良いことになります。
これらは積の順序を入れ替えると,すべて (A) と等しくなります。つまり,
「ちょうど 2 回 ☆ が起こる」は,☆☆☆△△ を並べ替えた分を,すべて加算しなくてはいけません。
☆☆☆△△ の並べ方は,同じ文字を含む順列より,
5! 通りあります。
2!3!
一方で,考えている事象が「起こる」と「起こらない」の 2 つの事象しか考えていないとき,
5 回の試行のうち,2 箇所を ☆ に取り換えると,残りは自動的に △ になります。よって,求める確率は,
5C2 × (1)2 (2)3 =80
33243
公式  ある試行を 1 回行って,事象 A が起こる確率が p であるとする。
この試行を n 回繰り返したとき,事象 A がちょうど r 回起こる確率は
nCr × pr × (1 − p)n − r
覚え方の 1 例:(並べ方)×(起こる確率)回数 ×(起こらない確率)残り回数

(3) 「ちょうど 2 回」,「ちょうど 3 回」,「ちょうど 4 回」,「5 回とも」と場合分けし,加えてもかまいませんが,
なんだか要領が悪い気がするときは,余事象も考えてみましょう。
余事象は「 1 回も 3 の倍数の目が出ない」または「ちょうど 1 回 3 の倍数の目が出る 」ですから,こちらの方が早そうです。
[A] 1 回も 3 の倍数の目が出ないとき,これが起こる確率は,
( 2)5 = 1
3243
[B] ちょうど 1 回 3 の倍数の目が出るとき,これが起こる確率は,
5C1( 1)1(2)4 = 80
33243
余事象 [A],[B] は互いに排反であるから,求める確率は,
1 − 1 + 80 = 2
2433
(4)  反復試行の中で 3 つ以上の事象を考えるときは,先ほど紹介した覚え方に戻りましょう。
「1 の目が出る」を ☆,「3 の倍数の目が出る」を △,「その他の目が出る」を ◆ とすると,
☆△△◆◆ の順に起こった確率に,☆△△◆◆ の並べ方を掛ければ良いことが分かります。
1 回の試行について,
☆ が起こる確率は1,△ が起こる確率は1,◆ が起こる確率は1
632
これらが起こる順序も考慮すると,求める確率は,
5!×1×( 1)2 ×(1)2=5
1!2!2!63236

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